ニュースリリース

2026/3/18

全国医師連盟理事会声明 全国の医学部地域枠の制度設計を正常化すべきである。~山梨県地域枠違約金訴訟・甲府地裁判決を受けて~ 

2026年2月28日

2026年1月20日、甲府地方裁判所は、山梨県の地域枠医師に対する最大約842万円の違約金条項について、消費者契約法の適用を認め、「平均的損害を超える不当条項」であると判断しました。さらに本判決は、当該制度が医師の「職業選択の自由」および「移動の自由」を侵害し得ることを明確に指摘しています。全国医師連盟は、本判決を医師の基本的人権と法治主義を守る極めて重要な司法判断として高く評価します。

1.構造的課題を個人に転嫁する手法の限界

医師偏在は国および自治体の制度設計上の課題であり、本来は政策的対応によって解決されるべき問題です。しかし現行の地域枠制度では、高額違約金やキャリア制限といった「制裁的手法」によって若手医師個人へ過大な負担を課す運用が広がっています。司法は今回、この「ムチによる確保策」に明確な歯止めをかけました。

2.後出しの不利益変更は許されない

入学時には存在しなかった制約を、専門医制度の変更や条例改正を理由に在学中・卒業後に追加し、既存学生にまで遡及適用する事例が各地で見られます。これは法の不遡及の原則および信義則に反し、将来設計の予測可能性を奪うものです。今回の判決は、こうした「後出しジャンケン型」の制度運用に対する重要な警鐘です。

3.不対等な契約関係の是正を

地域枠契約は、20歳前後の若年学生と締結され、その効力は10年以上に及びます。
形式上の合意があっても、将来の専門医取得や国家資格と結び付けられた長期拘束は、実質的に著しく不対等な契約関係といわざるを得ません。

基本的人権を制限する制度は、厳格な法的根拠と合理性を必要とします。

地域医療を持続させるために必要なのは違約金ではありません。働きがいのある医療現場、公正な処遇とキャリア支援、家庭事情への柔軟な配慮等、医師が自発的に地域に残りたいと思える制度こそが、真に持続可能な解決策です。

4.全国的な制度総点検を求める

本件は山梨県に限られた問題ではありません。
全国医師連盟は、国および各自治体に対し、

・地域枠契約条項の全面的再検証
・不当な違約金条項の廃止
・遡及的な不利益変更の停止
・専門医制度への過度な行政介入の見直し
を強く求めます。

本判決は、「地域医療の維持」という大義名分のもとで看過されてきた過大な義務付けに対し、司法が明確に是正を示した歴史的判断です。

全国医師連盟は、医師の基本的人権を守りつつ、持続可能で公正な地域医療体制の構築に向け、引き続き提言と行動を続けてまいります。

参考リンク

甲府地裁判決・高額違約金差し止め認める|消費者機構日本(訴訟概要)
https://www.coj.gr.jp/injunction/topic_260127_01.html
山梨県地域枠離脱時違約金差し止めを認める判決(m3.com
https://www.m3.com/news/iryoishin/1317108
山梨県が控訴の方針(共同通信)
https://news.jp/i/1391353258789208764?c=39550187727945729
医学部地域枠は労基法に抵触か、医師の「人身拘束」の懸念
https://www.m3.com/news/iryoishin/994713