ニュースリリース

2023/1/29

全国医師連盟は、ウログラフインの【一部適応削除】を歓迎します。

さらなる安全対策の強化のために、名称変更を提案しました。

胆管造影検査時の使用造影剤を保険請求できるように制度変更することを要請しました。

一般社団法人全国医師連盟代表理事 榎木英介

 ウログラフインによる尿路、関節造影の保険適応が削除されます。

【ウログラフィン®注60% 20ml/100ml 一部適応症削除の予定に関するお知らせ】

バイエル薬品株式会社のこの度のご英断に感謝申し上げます。また、長期間にわたり、ご尽力いただきました皆様方にも、感謝申し上げます。

 国立国際医療研究センター病院で2014年にウログラフインによる医療事故が起き、全国医師連盟前代表理事が『ウログラフインの製造を、今こそ中止すべき時です。』を執筆してから4年も時が過ぎました。しかし、その後も同様の医療事故が発生しています。2022年1月にもウログラフインを誤投与した事例が新たに確認されました。

 医療事故調査制度が運用される以前は、

事故発生

最終立会者に業務上過失致死傷罪を負わせる

刑事裁判

有罪

事故原因解明不能

他の医療機関で別の事故再発

最終立会者に業務上過失致死傷罪を負わせる……

という事故再生産サイクルが常態化していました。これは業務上過失致死傷罪(刑事罰)が再発防止に役立っていないことを意味しています。ウログラフインと似た医療事故は、リドカインや塩化カリウムでも発生していました。しかし、これらは製剤の規格や形状を変更することで、医療事故の再発防止をなしえました。このため、我々全国医師連盟は、ウログラフインの製造中止こそがウログラフイン誤投与による医療事故の何よりの再発防止策であると主張しました。

 今回、ウログラフインの「一部適応削除」に至ったことは、ウログラフインによる脊髄造影で死亡あるいは重大な後遺障害を残す悲劇を大幅に減らす1つの契機となることは間違いありません。しかし、「一部適応削除」は、完全なる再発防止策ではありません。

 ウログラフインのこれまで適応となっていた処置は、内視鏡的逆行性膵胆管造影、関節造影、逆行性尿路撮影、経皮経管胆道造影でした。これからは、内視鏡的逆行性膵胆管造影、経皮経管胆道造影のみが適応処置です。すなわち、消化器内科(あるいは消化器外科)と整形外科を共に有する医療機関内では、今後もウログラフインが残ることはありえるため、誤使用による悲劇が再び起こりうることは否めません。

 そこで、今回のバイエル薬品株式会社の大英断をさらに有効活用するために、全国医師連盟はウログラフインの名称変更を同社に提案しました。ウログラフインの適応範囲が胆道系に限定されますので、泌尿器科に関連する【ウロ】を胆管に関連する【バイル】に変更し、バイルグラフインに変更されることを提案しました。

 薬品の名称変更で医療事故が大幅に減少した事例は過去にもあります。大日本住友製薬株式会社が2012年に高血圧症・狭心症・不整脈治療剤/本態性振戦治療剤の「アルマール」の販売名を「アロチノロール塩酸塩」に変更し、経口血糖降下剤の「アマリール」(サノフィ・アベンティス株式会社)との取り違えによる死亡を含む医療事故事例やヒヤリ・ハット事例を大幅に減少させました。この事例に先立ち、「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」という通達(2000年9月19日医薬発第935号)が発表されました。この通達を受けて、カリウム含有注射剤である「コンクライトP」が「コンクライトPK」にかわりました(2005年)。

 ウログラフインがまだこの世にある限り、脊髄造影で使おうとする医師は、残念ながらまだ存在するでしょう。ウログラフインを使用する理由として、そのコントラスト(くっきりはっきり)を上げる医師は少なくありません。ただ、そういう医師のほとんどは、視力の低下したベテラン医です。眼力の衰えを素直に受け入れ、若手に任せることが医療安全に繋がる自覚を持つことを勧めます。

 そして、個人の裁量でウログラフイン事故が起こらないようにするために、組織で対策を講じることも大事です。一例として、山梨大学医学部附属病院の取り組みを下に記します。

https://www.hosp.yamanashi.ac.jp/wp_hosp/wp-content/uploads/2022/04/dibox1505.pdf?fbclid=IwAR1Aqa-IvxY8lm8A9WkZiAaCIwc3jnSIWoRxOYRVv__C8LW-x-zw8lG7mQQ

 なお、内視鏡的逆行性膵胆管撮影に関しては、非イオン性等浸透圧造影剤のビジパーク270注が適応を有しています。

しかし、最大の問題が薬価です。60%ウログラフイン注 20ml(バイエル薬品)440円に対し、ビジパーク270注20ml(GEヘルスケアファーマ)は1593円です。製造元にさらなる価格低減を期待しますが、全医療機関に対して、医療安全のための経費として受容されることを望みます。

 同時に、厚生労働省には、医療安全のコストとして、胆管造影検査時に使用する造影剤を保険請求できるように制度変更することを要請しました。