メールマガジン

2019/2/02

<第78号>      平成31年2月2日発行

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■■■■  全国医師連盟 メールマガジン  ■■■■■■■

■■ Mail Magazine from Japan Doctors League ■■■

           発行:全国医師連盟メールマガジン編集部

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <第78号>      平成31年2月2日発行

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━ INDEX ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

[1] ごあいさつ

………………………………………………………………………………

[2] 「働き方改革」について

………………………………………………………………………………

[3] 働き方改革に関する執筆、プレスリリース

………………………………………………………………………………

[4] 労働契約書、就業規則、36協定を再確認しましょう

………………………………………………………………………………

[5] 時間外給与をきちんと請求しましょう

………………………………………………………………………………

[6] 2/16に【医師の働き方シンポジウム】を開催します。

〜残業2000時間もしたら、死んじゃうよ~

………………………………………………………………………………

[7] 第12回全国医師連盟集会のお知らせ

………………………………………………………………………………

[編集後記]

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━[1]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ごあいさつ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 こんにちは。全国医師連盟代表理事の中島恒夫です。

 全医連メールマガジン(第78号)をお届けします。

前号をお送りしてから半年近くもあいてしまい、恐縮です。尋常

ではない多忙な実臨床に見舞われていますが、何とか頑張っていま

す。

そうこうしているうちに、「働き方改革」が佳境を迎えてきました。

しかし、厚生労働省内ではまともな議論も無く、また、働き方を本

当に改革しようという動きが全く無く、悶々とする日々を皆さんも

送っているのではないでしょうか?

今号の全医連メールマガジンは、現在進められている「働き方改

革」に関連した内容を中心にお届けします。

━━[2]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「働き方改革」について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 厚生労働省内で「医師の働き方改革検討会」が開催されています。

第17回まで開催を重ねています。2月6日には第18回が開催されま

す。3月末日までに決めなければならないことが法律で定められて

いるため、厚労省は今、大慌てです。厚労省のホームページに資料

が掲載されていますので、皆さんもご覧ください。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_469190.html)

 医師の働き方を変えるための現状認識から話し合いを始めた感は

否めません。実臨床に関わる立場からすると、その歩みの遅さに苛

立ちを覚えます。そして、勤務医がこんなにも多くの「雑用」を強

いられていたことを再認識します。

 議論が緩慢な原因は、勤務医の過重労働の要因がそれだけ多岐に

渡っていることを証明しています。

(供給側の問題)

・医師不足

・医療の高度化

・過重労働を諦めていた?

(病医院管理者の問題)

・労働法規に対する無知

・時間外給与の不払い

・マネージメント力の欠如

(国の問題)

・医療費抑制という愚策の継続

・財務省に牛耳られている厚生労働省

・法規に疎い厚生労働省職員

・応召義務規定の誤用

・医療法第16条:宿日直に関する規定

・業務上過失致死傷罪の存在

・アクセスフリー

・無駄な書類作成

(患者の問題)

・専門医嗜好

・総合医嗜好

・おまかせ嗜好、丸投げ思考

・コンビニ感覚

・育児世代も非常に多忙

・高給取りへのやっかみ

かなりキツイ表現も盛り込みましたが、勤務医の過重労働には、他

にも様々な要因があります。

 そもそも論ですが、この検討会が医師の働き方そのものを変える

趣旨で開催されたわけではありません。第1回検討会で塩崎厚生労

働大臣(当時)が開催の冒頭で「36協定の特別条項を見直す検討

会」であると発言しています。非常に残念なことです。

(議事録:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000176215.html)

 現在の議論は、時間外勤務を過労死基準の倍、あるいはそれ以上

の2000時間まで認めることで結論づけようとする厚労省と四病協の

思惑通りに進められています。勤務医を過労死させ、勤務医の心身

を蝕み、地域医療が崩壊することなどお構いなしのようです。医師

不足を断固として認めていない厚労省と四病協のこれまでの失態が、

雪だるま式に膨れ続けて今に至っていることを、絶対に認めたくな

い方針の表れです。

 「患者のために」「地域のために」という常套句を繰り返して勤

務医に過重労働を強いる病院管理者の考え方は、「お國のために」

「滅私奉公」という旧態依然とした発想であり、そのような病院管

理者は自分自身が、自分の病医院が、自分の地域が破滅への道を歩

んでいることに気づきません。

 医療は箱モノでなく、人が運用する「システム」です。職員は備

品ではありません(https://www.m3.com/news/iryoishin/222662)。人

が運用しているという視点が欠落していると、人は疲弊し、作業効

率が低下します。作業効率の低下した備品を「取り替えれば良い」

と思っている病院管理者は、「気合い」と「根性」が大好きです。

 今は、自分の技術を遺憾なく発揮できる病院・診療環境を、勤務

医が選択できる時代です。若手医師にとっては、人材育成に長けた

医療機関を選べる時代です。「人は城なり」という金言を知らない

管理者の病医院にお勤めでしたら、そのような病院からは早く離れ

た方が良いでしょう。

━━[3]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

働き方改革に関する執筆、プレスリリース

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 最近は「働き方改革」に関する文章ばかりを書いています。

 前回のメールマガジンでもお知らせいたしましたが、医学通信社

から「「働き方改革」と医療:勤務医の立場から」という執筆依頼

があり、投稿しました。月刊/保険診療8月号に掲載されました。

また同号の座談会(テーマ:「働き方改革」の何が問題なのか)

にも参加しました。 https://www.igakutushin.co.jp/products/magazine/918

 e-hon(https://www.e-hon.ne.jp/bec/EB/Top)でも購入できます。

 昨年12月14日には、「医療安全を脅かし、勤務医の過労死基準

超の長時間労働容認に断固として反対する」理事会緊急声明をプレ

スリリースしました。

(http://zennirenn.com/news/2018/12/-301214-2.html)

 今年の1月6日付で、代表理事の私見「病院勤務医の一般外来診

療をやめるべし」をm3.comから配信してもらいました。

(https://www.m3.com/news/iryoishin/651408)

 あちこちで引用され、様々な炎上が起きているという話を耳にし

ましたが、私に直接御連絡をいただいた方々からは、諸手を上げて

全面賛成するという高評価ばかりをいただきました。

 1月7日には、「実効性のある「医師の働き方改革」を実現する

ための基盤整備の要望」を根本匠厚生労働大臣を筆頭に厚生労働省

関係部局の関係者に、そして、「医師の働き方改革検討会」構成員

に要請しました。

(http://zennirenn.com/opinion/2019/01/post-37.html)

 この内容は、1月8日付でMRICからも配信してもらいました。

(http://medg.jp/mt/?p=8806)

 1月29日には、「行政機関が作製を求める書類に、大胆な簡素化

を求める:『民間保険会社が医療機関に求める診断書等の簡素化等

に関する研究会』開催に関する私見」、をMRICから配信してもらい

ました。(http://medg.jp/mt/?p=8839)

これらの他にも、数本の執筆を進めています。

━━[4]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

労働契約書、就業規則、36協定を再確認しましょう

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 過労死基準をはるかに超過した時間外労働を強いられないための

「自己防衛策」が、非常に重要であることを再認識しています。

 「労働契約書」を皆さんはきちんと交わしていますでしょうか?

旧態依然とした書式であれば、「今流」の書式に更新しましょう。

 あわせて、就業規則も確認しておきましょう。そして、コピーを

皆さんのお手元に保管しておきましょう。就業規則を勤務医1人だ

けで変えることはできませんが、就労規則が知らぬ間に変更されて

いることもあります。

 そして、時間外勤務を規定する36協定も再確認しましょう。

病院内の各職種ごとに時間外勤務に関する取り決めが記載されてい

ますが、「医師」が記載されていない場合や、医師だけが突出した

時間外勤務を強いられているかもしれません。

 是非とも、確認しておきましょう。

━━[5]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

時間外給与をきちんと請求しましょう

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 労働契約書、就業規則、36協定を確認していただいたら、時間

外給与を適正に支払われているか確認しましょう。

 特に、準夜帯や深夜帯などの夜間帯の勤務(診療)や休祝日勤務

(診療)は時間外給与であり、就労内容によっては、「宿直手当」

だけの支払は違法となりえます。準夜帯や深夜帯に外来患者診療を

した場合、手術時間が延長した場合などに時間外給与が法定割増賃

金として支払われているか、確認して下さい。

 なお、請求可能な期間は過去2年間まで遡ることができます。

 適正な時間外給与を支払われていない場合は、職場に御相談、あ

るいは労働基準監督署に御相談ください。適正な時間外給与を支払

われていない場合には、病院と契約している社会保険労務士(社労

士)や弁護士にではなく、皆さん個人で別の社労士や労働問題に詳

しい弁護士に御相談することをお勧めします。

 このような相談をしたことで業務上の不利益を被った場合には、

パワハラでもあり、れっきとした犯罪ですので、告訴も御検討した

上で、その病院を辞めましょう。

 全国医師連盟に御相談いただいてもかまいません。

━━[6]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2/16に【医師の働き方シンポジウム】を開催します。

〜残業2000時間もしたら、死んじゃうよ~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 大変、急な企画ですが、

【医師の働き方シンポジウム】

〜残業2000時間もしたら、死んじゃうよ~

という企画を開催します。

日 時:2019年2月16日(土)16時~18時

場 所:中央大学 駿河台記念館

参加費:500円(会場費)

事務局:NPO法人医桜

 医師の働き方「改革」のはずでしたが、現状の労働時間を維持し

ようという方向で厚労省案が出てきました。現在の残業時間は、す

でに過労死ライン「ギリギリ」で働いているのであって、それを構

造的に解決していく必要があります。

 過労で亡くなる医師が後を絶たないという社会問題に対して、今

回厚労省が提示した年2000時間の残業については、一般市民の方か

らも「いくら何でも、それはないのではないか」といった声が聞か

れています。

 そこで、臨床現場での長時間労働は「医療の安全性」という観点

からも問題があり、医師の偏在が社会問題であることを認めさせた

上で、地方でもどのような医療を提供していくのかということを、

医療者も一般市民も一緒に考える場を作ろうと、今回のシンポジウ

ムを企画しました。

 現在のところ、下記の演者を予定しています。

1)法律の立場から(弁護士)

2)産科医の取組から(産科医)

3)これから師になる医立場から(医学生)

4)女性のワークライフバランスを考えて(女性医師)

5)海外の医師就労状況

また当日、会場参加の皆様からもリレートーク方式でコメントをい

ただければと考えています。その他に、現役勤務医の方、かつて勤

務医で今は開業医の方、一般市民の方から、医師の長時間労働につ

いて一言モノ申す、メッセージを集めたいと考えています。

 医師の働き方「改革」をして、医師でもあっても人間らしい生活

ができる環境を創っていくことは、日本の医療を守ることに繋がり

ます。医師の常態化している長時間労働を是非とも解消し、人間ら

しい就労環境下で安全な医療を提供できることを目指したいと考え

ています。

運営のお手伝いも募集しています!

さらなる詳細は後日正式に発表します。

━━[7]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

第12回全国医師連盟集会のお知らせ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 詳細を最終決定していませんが、6月9日(日)の開催を予定して

います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 メールマガジン第78号をお届けしました。

 医師不足を絶対に認めないことで利する人が、医師の過重労働を

放置してきました。そして、そのような人が医師の過重労働を改善

させることに抵抗しています。

 医師の養成には長い年月が必要であることを、私たちは承知して

います。しかし、医育機関の医師達も過重労働に晒され続けていま

す。医師増員に関しては現状で手一杯です。医師の過重労働を改善

させるためには、医育機関の集約化も検討に値するはずです。

 勤務医の過重労働を改善するためには、都市部の急性期病院の集

約化ももちろん必要です。

 急性期病院を集約化させても、一時的な効果しか表れないかもし

れません。それは、次世代の医師がその地域で勤務するという保証

が無いからです。

(https://president.jp/articles/-/27385?fbclid=IwAR09KeAyPXgJMKR2E4DGvVhptIxKrwQWsp4SaFEAQljQyjgLoJXyWOdhcZA)

専門医制度の瑕疵が、医療崩壊のダメ押しとなりかねません。皆さ

んの地域に若手医師がどれだけいるのか、一度確認しても良いかも

しれません。私の勤務している2次医療圏は、酷い状態でした。

 全医連メールマガジンに「このような情報も載せてほしい」「こん

な情報があります」「こんな工夫をしてみたら?」などのご意見があ

りましたら、是非お寄せ下さい。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

●全医連メールマガジン編集責任者:代表理事 中島恒夫

 (↓全医連SNSのページ) http://doctors21.jp/?m=pc&a=page_f_home&target_c_member_id=304

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

全医連HP      http://zennirenn.com/

全医連SNS     http://doctors21.jp/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■■■■■  全国医師連盟 メールマガジン  ■■■■■■■

■■ Mail Magazine from Japan Doctors League ■■■

           発行:全国医師連盟メールマガジン編集部