ニュースリリース

2022/6/21

全医連声明2022:医師の宿日直許可基準を堅持すべきである。

 今般の医師の働き方改革の目的は以下の2つである。

 ①常軌を逸した医師の長時間労働を改善し、より安全な医療提供体制をもたらすこと。

 ②過重労働による医師の離職を避けることで、地域医療の持続性につなげること。

である。

 全国医師連盟は、これらの目的を達成するためには、「都市部を中心に急性期病院を集約し、人的医療資源を集中することで長時間労働を是正することが不可欠である」(https://zennirenn.com/news/%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%81%AE%E6%8C%81%E7%B6%9A%E6%80%A7%E[…]8%A6%81%E3%81%AA%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E9%83%BD/)と以前から繰り返し述べてきた。また、地方においては、「地方では、医療以外のインフラ整備も視野に入れ、医療圏を積極的に再編すべきである。」(https://zennirenn.com/news/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%AB%EF%BC%92/)を提案した。

 現在、日本医師会(以下、日医)や四病院団体協議会、全国有床診療所連絡協議会、全国自治体病院協議会(以下、全自病)が、勤務医の宿日直許可基準を「現状に合わせて緩和」するように厚生労働省(以下、厚労省)に求めている。日医等が3月18日に厚労省に提出した「医師の働き方改革に関する要望書」(http://www.hospital.or.jp/pdf/06_20220318_01.pdf)には、「医師の宿日直には、一般業種とは異なり、①救急外来、入院患者対応といった気を張り詰めた業務が一定程度発生する、②宿日直中でも応招義務があるため対応しなければならない」と記している。このような記述は、「通常業務があれば宿日直として許可しない」という労働基準法(以下、労基法)の趣旨を、日医等が全く理解していない証左である。日医等が現状維持を求めるということは、働き方改革を阻害し、安全な医療提供体制を構築する意図が無いことを宣言しているのに等しい。

 近年、医師の労働時間の正常化が医療の「安全性」や「持続性」を担保する上で必須である、と認識されている。これを踏まえ、「医師の働き方改革検討会」での審議を経て、2019年に医師の宿日直許可基準が更新された(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000530052.pdf)。その検討会の構成員には、日医等の病院経営者も多く含まれている(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf#page=32)。更新された内容は、軽微な業務などの具体化の他、診療科別や当番日など繁忙日を除外して許可するもので、従前よりも許可の幅をある程度拡げた。実際に、宿日直医を2名置くことで1名当たりの業務量を減らし、宿日直許可を得た病院も報告されている。

 日医等がなすべきことは、医療機関に繁忙日の除外や労働時間上限規制が無い病院管理者の宿日直などを工夫し、法令遵守を達成するべく労働基準監督署の指導を受けるように促すことである。宿日直許可基準そのものの緩和を求めることではない。

 全自病の医師の働き方改革に関するアンケートでは、「許可を取得していないと回答した病院の理由では、『許可が取れない』が51.0%を占めた」と報道されている(https://www.cbnews.jp/news/entry/20220421204022)。旧県立奈良病院のように(http://www.mibarai.jp/gyoushubetu/narabyouinjiken.html)、夜間受診者が少なかった40~50年以上前に取得した宿日直許可の場合、現在の勤務実態が宿日直相当でないなら、宿日直許可を新たに取得することが困難であることは当然である。また、他の報道(https://www.m3.com/news/iryoishin/1037479)では、「宿日直許可については、『宿日直を行っている全ての診療科で許可を取っている』が43.9%、『一部の診療科しか取っていない』が4.0%、『全く取っていない』が33.4%、『休日夜間等時間外は、全て勤務としている』が4.8%。」とされ、アンケートに回答した自治体病院の約3割が宿日直許可なしの宿日直運用で、賃金不払いを放置していることになる。「宿日直許可なしでの宿日直運用」は、現時点で労基法違反である。本来支払うべき宿日直帯全時間分の割増賃金が不払いであり、それが判明した時点で遡って未払い賃金を支払うべきである。

 戦後、労基法が施行されてから現在に至るまで、医師の労働に関しては労基法の適応がおざなりで、監督官庁による監視は全く機能しなかった。労基法36条協定(サブロク協定;https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/36_pact.html)が未締結の状態での時間外労働、旧来の宿日直許可基準を満たせない時間外労働に対する賃金未払いなどが放置されてきた。労働基準監督官は、違法行為を常態化させている病院設置者・管理者を厳しく指導し、改善の意志が無い管理者を送検すべきである。

 医療安全の最大の毀損要因である過剰労働が未だに放置されている。現状を合法化させることが、医師の働き方改革の目的ではない。新たな宿日直許可基準が2019年に公表された時点で、2024年からの急性期病院の時間外運営に必要な勤務医を確保することが困難であることは、すでに明らかになっていた。すなわち、現在の急性期病院数を今後も維持することは不可能である。日医等が2019年の宿日直許可基準を受け入れ、安全な医療を提供するための働き方改革を進めるものと、我々は理解していた。ところが、それから3年が経過し、自らも策定に関わった宿日直許可基準の訂正を再度求める暴挙を、我々は理解できない。働き方改革を他業種はすでに進捗している。しかし、2024年まで5年間もの猶予を与えられた医療業界では、改革に向けての動きが見えてこない。コロナ禍で対応が困難であると日医等は主張しているが、コロナ禍は人員が貧弱な施設で重症新型コロナウイルス感染症対応が不可能であることを、皮肉にも明らかにした。

 我々全国医師連盟は、2019年に示した宿日直許可基準を厚労省が堅持し、すべての医療機関に労基法を遵守させることで、急性期病院の集約を着実に進めることを要望する。今後、労基法を遵守することで交代制勤務などの持続可能な労働環境を構築した病院が、勤務医を含む医療従事者から、そして患者からも選択されることを、我々は期待する。

令和4年6月21日

一般社団法人全国医師連盟