メールマガジン

2017/8/15

<第72号>      平成29年8月15日発行

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■■■■■  全国医師連盟 メールマガジン  ■■■■■■■

■■ Mail Magazine from Japan Doctors League ■■■

           発行:全国医師連盟メールマガジン編集部

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  <第72号>      平成29年8月15日発行

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━━ INDEX ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

[1] ごあいさつ

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[2] 第10回 全医連集会(午後)について………………………………………………………………………………

[3] 医師数について

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[4] 長時間労働について

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[5] 医療事故調査・支援センターの認可取り消しを要請する。

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[6] 全医連への御支援のお願い

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[編集後記]

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━━[1]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ごあいさつ

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 お暑うございます。

 お盆も過ぎ、夏休みも後半戦です。

 超高齢化社会に無理矢理辻褄を合わせようとする国の制度改変

から、様々な歪みが垣間見えてきています。実臨床の現場が上げ

る悲鳴に、国は気づこうともしていません。山のように残ってい

た「宿題」と苦闘し、先送りばかりしていた私の子供時代と変わ

りありません。

 全医連メールマガジン(第72号)をお届けします。最近の全

医連に関する様々な情報や、今後の予定についてお伝えします。

ホームページや全医連SNS内に情報があるものなどは、リンク

を張ってあります。では、どうぞ。

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第10回 全医連集会について

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 平成29年6月4日(日)午後1時から開催しました。

今回のテーマは、

「医療における無過失救済補償制度を考える」

〜医療事故調査制度のもう一つの側面を考える〜

でした。

 日常生活で遭遇してしまうかもしれない数多の事故や災害に

対して、それぞれの分野での公的救済補償制度は、微力ながら

いくつか制度化されています。また、民間でも生命保険や損害

保険といった形で商品化されてもいます。

 医療の分野での事故の発生頻度も決して高くはありませんが、

ゼロではありません。しかし、医療の分野での公的救済補償制

度は、その補償対象が非常に限定的です。

・医薬品副作用被害救済制度 ・生物由来製品感染等被害救済制度 ・予防接種健康被害救済制度 ・産科医療補償制度  など

また、これらの既存の救済制度は、制度自体の問題以外に、そ

の制度の運用にも問題を孕ませたまま今日に至っています。過

失の有無にかかわらず、医療事故に遭われた方を迅速に救済で

きる補償制度は、まだまだ不十分です。

 現行の医療事故調査制度については様々な批判や意見があり

ます。特に患者遺族の方々からは、厳しい意見を聞きます。し

かしながら、現行の医療事故調査制度は、事故原因の調査と再

発防止が目的です。患者遺族の救済補償のための制度ではあり

ません。また、既存の救済制度は救済対象が非常に限定的であ

り、医療全般に関する補償を求めるためには、民事訴訟以外に

術がありません。このため、医療全般に関する救済補償制度、

特に、無過失救済補償制度が必要です。

 医療事故調査制度と裏表の関係でもある公的な救済補償制度

に言及しないことは、医療事故調査制度の正しい運用の妨げに

もなります。公的制度設計のありようについては、法律の知識

が重要であることはもちろん、社会正義も十分に吟味される必

要です。医療政策、病院経営、管理職、現場医師、それぞれの

観点から課題と解決策を掘り下げ、より良き社会の構築に寄与

したいと考えています。

 当日の模様を、Youtubeにアップロードいたしました。ご参

考にしていただければ幸いです。

20170604 全国医師連盟集会① 演者 中島恒夫

20170604 全国医師連盟集会② 演者 大磯義一郎先生

20170604 全国医師連盟集会③ 演者 坂根みち子先生

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医師数について

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 全国医師連盟として、医師数についての見解を公式発表したこと

はありませんでした。もちろん、問題が無いわけではないことは承

知していました。

 理事会でも数年間にわたり議論を続けていましたが、以下の内容

でまとめることを考えています。

・勤務医の時間外労働を過労死基準内にとどめるとすれば、医師数

 が近い将来のうちに充足することはありえない。

・指導者の確保も困難であり、医師養成側が限界であることを前提

に、医師養成数を大幅に増員することは困難なので、医師数を今

のペースで増やし続けていく。

・新規医学部を数校造設することには反対しない。

・チーム医療を通じた他のメディカルスタッフへの権限移譲や、介

護分野への業務委嘱など、医師の業務を削減するような施策(医

師の仕事量を減らす施策)が拡充することを望む。

・連続勤務時間の制限を望む。

・高齢医師が若年層と同様の労働量を求められる医療制度設計は改

めるべき。

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長時間労働について

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 勤務医の長時間労働、長時間連続労働は、本当に何とかしなけれ

ばならない大問題です。国や国民は、善意の医師を、いつまで犠牲

にし続けるつもりなのでしょうか?

 この問題を解決する最大の目的は、「医療安全」です。私たち全

国医師連盟としては、国民の健康を守る医療現場において、医療者

の長時間連続労働は医療安全の阻害因子であることをこれからも訴

え続けます。

・その1:「当直」という言葉を駆逐しよう!

     法にならい「宿直」と標記しよう!

・その2:長時間連続労働が医療安全を著しく毀損している!

     徹夜明けの医師に手術や診療をしてほしいですか?

・その3:安全性低下により紛争リスクが高まり、萎縮医療・過剰

     診療を招いている!

・その4:宿直はサービス残業(違法労働)となっている!

     未払い時間外賃金を請求しよう!

 しかし、勤務医の長時間労働制限を主張すると、多方面から必ず

反論されます。いわゆる、アクセス制限の問題です。

 しかし、過重労働を強いられた勤務医がその医療機関を辞すれば、

結局は地域医療崩壊を促進するだけであることを、地域住民や議員、

首長、病院管理者はいつ理解するのでしょうか。多くの医療崩壊地

域の報道を、今さらながら知らないとは言えないはずです。

 勤務医ではないがゆえに労基法の規制から外れてしまいましたが、

たった1人だけの高齢病院長の急逝で、消滅しかけた地域医療もあ

りました。善意の医師の過重労働で支えている地域の医療は、すで

に崩壊しています。

 勤務医の労働時間規制については、医療の供給体制維持を優先す

るか、それとも過重労働からの医師の健康保護を優先して医療安全

を図るか、最終的には政治の判断になります。

 一つの落とし処として、医師に関しては、36協定の上限を年間

360時間(厚生労働大臣基準:労働基準法第36条第1項の協定で

定める労働時間の延長の限度等に関する基準)まで認める代わりに、

労働時間を厳格に管理させ、それに違反する病院に関しては、罰則

を強化する、そのような施策も一案と考えます。ただ、この案にも

問題はあります。

 もちろん、全医療機関が時間外手当を厳格に支給すべきであるこ

とは、言わずもがなです。

 また、危険有害業務での1日2時間の上限規制は、労基法36条

第1項に明記されています。

労基法第36条第1項:使用者は、労働組合等(労働組合が無い場合は労

働者代表)と時間外・休日労働 に関する協定(36協定)を締結し、管轄

する監督署長に届け出た場合においては、労働時間または休日に関する規

定にかかわらず、その協定で定めるところにより労働時間を延長し、また

は休日に労働させることかできる。ただし、坑内労働その他厚生労働省

令(労基則第 18 条)で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長

は、1日について2時間を超えてはならない。

延長時間か2時間を超えてはならない有害業務

(労基則第18条)

1(略)

2(略)

3 ラシウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

4〜8(略)

9 鉛、水銀、……(略)……その他これに準ずる有害物の粉塵、蒸気

  又はガスを発散する場所における業務

10(略)

なお、労基法第32条には罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円

以下の罰金)があります。

 勤務医の長時間労働規制は、病院の自助努力とすべきではありま

せん。医療は公的色彩が強い(インフラである)以上、国が規制す

るのが筋です。

 自動車運転者(長距離トラック、バス、タクシーの運転手)には、

法定労働時間の特例が国土交通大臣によって既に設けられているこ

とはご存知でしょう。勤務医にも労働時間の特例を設けることは、

厚労省(大臣)が決断すれば可能な話です。

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医療事故調査・支援センターの認可取り消しを要請する。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 医療事故調査・支援センターである日本医療安全調査機構から

「医療事故の再発防止に向けた提言 第1号 中心静脈穿刺合併症に

係る死亡の分析―第1報―」がお手元に届いた方も多いでしょう。

実臨床に携わっている者であれば、これが医療事故調査・支援セン

ターの規定業務から大きく逸脱していることにお気づきでしょう。

 医療事故調査・支援センターの業務に関しては、改正医療法にき

ちんと記されています。また、厚労省のホームページにもQ&A形

式でQ21に明示されています(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html

)。

「病院管理者の予期しない死亡事故の院内事故調査の報告を収集し、

その情報の整理及び分析を行うこと。」

これが、医療事故調査・支援センターの行うべき業務です。

 医療法には、以下のような規定もあります。

第六条の二十六

 厚生労働大臣は、医療事故調査・支援センターが次の各号のいず

れかに該当するときは、第六条の十五第一項の規定による指定(以

下この条において「指定」という。)を取り消すことができる。

 一  調査等業務を適正かつ確実に実施することができないと認め

られるとき。

 日本医療安全調査機構に対する医療事故調査・支援センターの指

定を取り消すよう、厚生労働大臣に要請すべき状態と考えています。

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全医連への御支援のお願い

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 大変恐縮ではございますが、全国医師連盟への御支援のお願い

です。

 設立して10年目を迎えた全国医師連盟ですが、設立当初からの

貧乏団体です。営利団体ではありませんので、業務活動から収益

を上げることができません。金儲けのために活動しているわけで

はないため、懐事情はお察しの通りでございます。

 医療を取り巻く様々な問題に対して、活動を幅広く展開したい

気持ちに変わりはございませんが、人的にも、資金的にも厳しい

状況は変わりありません。

 そこで、全医連活動に御支援いただける方々を募集しています。 (1)

全医連イベントへのご参加

全医連ではこれまでにも様々なイベントを企画しました。 http://zennirenn.com/news/event/

会員限定のイベントだけではありません。多くの方々に、

そして、非医療職の方々にも注目していただきたいと考え

ています。

不定期開催のこともあり、御都合を合わせづらいかと存じ

ますが、会場にまで足を運んでいただくことも全医連への

御支援となります。

是非とも全医連イベントにもご参加いただけますよう、お

願い申し上げます。 (2)

会員募集

全国医師連盟は一般社団法人です。法に則り、定款を定め

て、きちんと運用しています。日本国の医師であれば、全

国医師連盟の会員(社員)になれます。

全国医師連盟は、勤務医だけの団体ではありません。全医

連会員には、病院管理者もいます。開業医もいます。研究

職の医師もいます。女性医師もいます。休職中の医師もい

ます。勤務医以外にも会員はいます。

医療に関する様々な問題を改善するために、より多くの声

を集めたいです。新規会員を大募集しています。 http://zennirenn.com/admission/ (3)

ご寄付のお願い

定款に基づき、非医師の方は、全医連会員とはなれません。

申し訳ございません。

しかし、全医連の活動にご賛同いただけるようであれば、

ご寄付をありがたく頂戴いたします。税制上の優遇措置

を受けられませんが、全医連を御支援いただけるようで

したら、ご寄付をお願いいたします。

全医連事務局(http://zennirenn.com/about/#005)ま

でお知らせいただければ、担当者から御連絡を差し上げま

す。

全医連事務局:〒114-0023 東京都北区滝野川5-41-3 

                TKビル6階

       電話番号:03-5980-7313

       FAX番号:03-5980-7310

       E-mail:info@zennirenn.com

なお、全医連の口座は以下の2つです。

ゆうちょ銀行

  神田支店 記号:10150

  口座番号:78411281

  口座名義:シャ)ゼンコクイシレンメイ

(一般銀行ATMからゆうちょ銀行口座に振り込む際には、特別の

「店名」が要求されます。

  店名 〇一八(ゼロイチハチ)

  店名検索の頭文字は『セ』)

みずほ銀行

  神田支店 支店番号:108

  普通口座 口座番号:1260830

  口座名義:シャ)ゼンコクイシレンメイ

 納入後には、「お支払ご報告フォーム」からの御連絡もお

願いいたします。

 また、振込用紙の送付を御希望の方には、ゆうちょ銀行用

の振込用紙を全医連事務局から直接お送りいたします。下記

の項目を全医連事務局まで御連絡願います。

(1)送付先住所

(2)氏名

(3)メールアドレス

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編集後記

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 メールマガジン第72号をお届けしました。

 福岡県での豪雨被害も、迷走しまくった長寿台風5号も、地球環

境の変化の一端にすぎません。日本の四季は、これからも大きく変

わりそうです。今までと同様の発想、想定では国民の財産も、生命

も危ぶまれます。

 景気の後退、事業仕分けの影響(?)、労働者の減少など、様々な

理由があって、治山治水を維持できなくなっています。

 医療崩壊は社会崩壊の一旦ですが、環境崩壊も亡国に繋がりかね

ません。場末の胃腸屋の憂い事で済めば良いのですが……

 全医連メールマガジンに「このような情報も載せてほしい」「こん

な情報があります」「こんな工夫をしてみたら?」などのご意見があ

りましたら、是非お寄せ下さい。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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●全医連メールマガジン編集責任者:代表理事 中島恒夫

全医連HP      http://zennirenn.com/

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