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解説・オピニオン

[声明]「医療事故調査と刑事捜査に対する緊急声明」を発表します。

医療事故調査と刑事捜査に対する緊急声明


今秋、医療事故調査制度が開始されても、

医療事故調査と刑事司法の関係性は全く改善されていない


平成27年3月8日 一般社団法人全国医師連盟 執行部


 はじめに、この声明は、平成26年2月に発生した東京女子医大プロポフォール医療事故(以下、本事故)の経緯についての論評ではありません。本事故の医療事故調査委員会と捜査機関の関係性に関する注意喚起を目的としています。なお、平成27年2月18日の以下の報道内容に基づく論評であることをお断りします。

http://www.47news.jp/smp/CN/201502/CN2015021801002139.html


 世界保健機関(以下、WHO)のドラフトガイドラインでは、医療安全分野の報告システムの目的として、失敗から学んで再発を防止する「学習」を目的とする場合、報告した医療者を懲罰しないこと(非懲罰性)や、報告された情報の秘匿性が重要であるとしています。

 上記報道によれば、東京女子医大は事故調査報告書を、捜査当局の要請に応じ提供しています。これは事故調査報告書の目的外使用であり、事故調査に関わった医療者の善意に反します。

 本邦の現行法制下では、単純過失も刑事責任を問われます。捜査当局はいかなる経緯であれ、過失による傷害や致死といった「犯罪」の端緒を掴めば、捜査を開始する法的権限を有しており、強制捜査となった場合、事故調査報告書以外に、関係者の証言記録を含む事故調査資料の全てを捜査機関が押収し、最終的に刑事裁判の証拠として使用される可能性があります。捜査当局の業務は、真相究明が目的ではありません。犯罪の有無を決めることが目的です。今後、本事故のような対応が、医療機関の管理者の間に拡散した場合、医療事故におけるハザード(背景要因)の抽出は困難となり、結果として、医療の安全性は低下し、萎縮医療が進行します。

 また、現在議論中の「事故報告書を遺族に渡すべきか否か」に関しても、仮に遺族に対しては報告書を渡さないことにしたとしても、捜査機関には報告書が提供される扱いならば、遺族は捜査機関を通じて報告書を入手しようとして、刑事告訴が誘発されることが懸念されます。

 責任追及、懲罰を目的とした事故調査を進める立場からは、「証言を求められた医療従事者は誠実に話さなければならない」という主張が繰り返されてきました。しかし、この主張のように、医療従事者の基本的人権を全く尊重しないまま進められる現在の調査手法では、医療従事者らは到底、事故調査に協力できません。その結果、事故の原因を解明することができず、本来の目的である医療安全を向上することは不可能になってしまいます。

 医療事故調査制度の議論開始の際、「事故調査制度が開始されれば、刑事事件は激減する」という声が一部の方から聞かれましたが、本事故はそれに全く根拠が無いことを明らにしました。なお、医師法21条ルートでの刑事事件化に関しては、最高裁の異状死の定義を遵守すれば届出の必要なケースは限られ、問題は激減するため、法制度の変更を必要としていません。

 今秋、事故調査制度が開始となった際、医療従事者は、医療機関設置者・管理者・運営者及び院内・院外医療事故調査機関が、医事紛争を可能な限り避けられるような事故報告書を作成しうる能力と見識を有し、信頼に値するか否かを見極めた上で、事故調査機関への協力、非協力を判断する必要があります。

 最後に、1年半後には、医療法の事故調部分に「さらなる見直し」が予定されています。我々全国医師連盟が以前から主張しているように、現行法制下においては、事故調査が刑事処罰に直結することをどうしても避けられません。事故調査の基本概念をWHOのドラフトガイドラインに準拠させ、真に医療安全・再発防止に寄与する事故調査制度にするためには、刑法の業務上過失致死罪の改廃が大きなテーマとなります。他業種の事故調査においても共通の問題となっている刑法211条や刑事訴訟法の改正の議論を、今後も続けていくことが重要であると我々は考えています。


【参考文献】

WHO Draft Guidelines for Adverse Event Reporting and. Learning Systems

 http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf

医療事故調査委員会関連の医療法改正案の根本的な問題点

 http://zennirenn.com/news/2013/12/post-56.html

医師法21条、「医療事故の届出想定せず」、厚労相

 http://www.m3.com/news/iryoishin/223482

業務上過失致死傷罪に関する、全医連声明

 http://zennirenn.com/news/2013/04/post-50.html



医療事故調査と刑事捜査に対する緊急声明.pdf

2015年03月08日 全国医師連盟

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