1. TOP
  2. イベント・ニュースリリース
  3. [ニュースリリース]麻酔科医師労災民事訴訟に対する声明

イベント・ニュースリリース

[ニュースリリース]麻酔科医師労災民事訴訟に対する声明

 東京高等裁判所で審理されていました「麻酔科医師労災民事訴訟」が、平成27年10月1日に和解により終結しました(http://masuika.jimdo.com)。この和解により、医療現場の常識とかけ離れた東京地方裁判所の判決が確定を免れました。本訴訟に於いて、東京地裁が認定した労働時間は、労働基準監督署が労災認定した労働時間と大きく乖離していました。全国医師連盟はこの点に大きな問題があると考え、以下の声明を発表します。

=============================================
平成28年3月16日(水)


麻酔科医師労災民事訴訟に対する声明


一般社団法人全国医師連盟


 東京高等裁判所で審理されていました「麻酔科医師労災民事訴訟」が、平成27年10月1日に和解により終結しました(http://masuika.jimdo.com)。この和解により、医療現場の常識とかけ離れた東京地方裁判所の判決が確定を免れました。本訴訟に於いて、東京地裁が認定した労働時間は、労働基準監督署が労災認定した労働時間と大きく乖離していました。全国医師連盟は、この点に大きな問題があると考えます。このような事案では、労働基準監督署が認定した労働時間を基に事実を認定しなければ、労働行政における法令解釈や、労働紛争の解決指針が揺らぎかねません。医療現場の最前線で奮闘している私たちは、本件訴訟で東京地裁が認定した事実内容を、そのまま高裁判断として認容しなかったことは、評価します。
 なお、今回の和解には経過や内容について公表しないとの条件があるため、和解内容を知ることは出来ません。ご了承ください。

 東京地裁判決には、以下に記す2つの問題点がありました。

(1)本件は業務命令によらない自発的な業務であったから、労働時間に含めないという判断。
(2)本件麻酔医の業務内容は軽作業であったから、実際の就労時間ではなく、割り引いて計算してよいという判断。

 医師は目の前の患者を救うために、「明確な」業務命令が無くとも、正規労働時間外であっても、必要とされる医療行為をせざるをえません。終業時刻がきたからといって、医師が瀕死の患者を放り出して帰宅することは、病院経営者も善しとしないでしょう。つまり実質的には業務命令があるに等しいのです。しかるに、もし仮に、(1)のような判断が今後も罷り通るとすれば、このような医師の勤務実態について病院経営者は何ら管理責任を負わず、従って改善もなされないことになり、結果として、医師個人は膨大な業務量を抱え込み、疲弊していきます。このような医療現場の実態を踏まえていない東京地裁判決は、医療崩壊をいっそう促進させます。また、(2)の判断は、麻酔科医の術中業務(循環管理、呼吸管理、疼痛管理)の高度な専門性と精神的な重圧を全く理解しておらず、事実誤認も甚だしいと言わざるをえません。

 前述のごとく、一見、美談として語られがちな医師の過重労働が、医師の身体を蝕む現実があります。したがって、従業員たる医師の心身を守るために、現実に休息を確約できる交代要員を確保すべき責任(安全配慮義務)が、各医療機関の使用者にはあります。その責任を果たすためには、従業員たる医師がたとえ承諾や希望をしようとも、他の医師に代えるなどの措置を講じて勤務を制限する義務が、各医療機関の使用者にはあります。使用者側は、医師労働者の労務提供によって病院経営の利益を受けている以上、「その時間を働かせていない」との抗弁は信義則から許されません。
 また、裁判官は、労働民事訴訟における労働時間数の計算を、労災給付につき認定された時間数と一致させるべきです。使用者側が民事賠償のペナルティを課されないのであれは、過労死の発生を防止しようとするインセンティブは働きません。

 私たち全国医師連盟は、36時間連続勤務に象徴される勤務医の過重労働が医師の心身を蝕むだけでなく、医療の安全性や地域医療の持続性を阻害する大きな要因であることを以前より指摘してきました。労働基準法を遵守する司法判断が、医療安全や地域医療の持続性に貢献できることを、再度指摘します。

=============================================

 なお、本声明を今後の裁判執務の参考にしていただきたく、最高裁判所 事務総長、東京高等裁判所 所長、東京地方裁判所 所長 宛に送付いたしました。

2016年03月16日 全国医師連盟

全国医師連盟グッズ
イベントのお知らせ
メディアの方へ
おすすめリンク
リンク集
全医連メルマガ(無料)申し込みフォーム
Loading