1. TOP
  2. イベント・ニュースリリース
  3. [メディアの方へ]業務上過失致死傷罪に関する、全医連声明

イベント・ニュースリリース

[メディアの方へ]業務上過失致死傷罪に関する、全医連声明

業務上過失致死傷罪を廃止すべきである

【業務上過失致死傷罪は事故調査を妨げる】
 医療・鉄道・航空機などの事故の多くは、その原因が個人の過失にのみ帰せられるものではなく、組織の安全管理体制の不備などの要因が重なり合って発生するものだとの指摘が近年なされ、このような事故は「システム性事故」と呼ばれている[1]。また、単純過失は、刑事罰によって抑制されるとは証明されていないとも言われている[2]。
 システム安全向上の制度設計を妨げている最大の要因は、刑法211条に定められている業務上過失致死傷罪(以下業過罪)の存在である。事故当事者の願いとして、「真実を知りたい」または、「事故を繰り返さないで欲しい」という声は少なくない。しかし、刑事裁判で「真実」を知ることを容易ではない。警察や検察は刑事犯罪の捜査が仕事であり、裁判所の役割は検察の主張に対し、有罪無罪の判断を下すことであり、関係者が期待する真実を解明することは使命ではない。また、捜査により得られた資料は、原則非公開(刑訴法47条)で、起訴後、公判で証拠として提出された場合を除いて非開示となり、将来の事故防止に利用できない。
 同様のことは他業界でも 述べられている。

【他業界の事故調】
 国土交通省の審議会の一つである「航空・鉄道事故調査委員会」が、鉄道事故・航空事故の原因究明、および今後の事故防止のために必要な 調査研究を行っている。しかし、現行制度では業過罪の刑事捜査が優先され、個人責任追及に晒された当事者や関係者の黙秘権の行使が事故原因の究明の妨げとなっている。航空関係者からは、事故原因の究明と再発防止のためには、日本政府が相違通告している国際民間航空条約第13付属書5.12条に則って、事故調を独立した強い権限を持つ機関に改組し、過失による刑事責任を問わないことで当事者からの証言を得やすくすることが必要である事が指摘され続けている[3]。
 2007年、自動車運転過失致死傷罪が制定され、従前の業過罪の対象の殆どが同罪の対象で無くなり、「特殊過失」と呼ばれていたものだけが業過罪の対象となっている。業過罪そのものの存在意義を見直すべき時期なのである。

【提言】
1.業務上過失致死傷罪は廃止するべきと考える。
2.WHOガイドライン[4]に準拠した事故調査機構を創設・充実させることによって、事故の真相究明、再発防止が進歩すると考える。業過罪廃止はその制度設計を容易にする。
3.現在の医道審議会を改変し、不適切な医療行為に関しては、事故調査の結果を受け医師自らが行政処分等に関わる制度を構築し、専門家集団として自律すべきである。

 先日、全国医師連盟執行部は、「過失を犯罪とする刑事法体系を見直すべきである。」という文章を発表しているが[5]、全国医師連盟内部でもその内容の詳細について、コンセンサスが得られている訳ではない。そこで、今回は一番重要である、業務上過失致死罪廃止に限って提言することとなった。
 今回の提言が、事故調査の刑事捜査の関わり、過失と刑事法体系の議論の、大きなきっかけとなることを期待している。

【最後に】
 エラーはいつでも、誰にでも起こりえる。システムエラーをなおざりにし、その責任を現場(当事者)に押しつければ、真相の究明は不十分になるだけでなく、リスクの高い現場で働く人が減少することは想像に難くない。現に、医療現場はそうした事態に直面し、医療機関への救急患者の受け入れが困難となっている。こうした状況の継続を誰がそれを望むだろうか。業過罪の廃止は、将来医療の恩恵を受けるであろう国民全体の利益になると考える。

平成25年4月20日 一般社団法人全国医師連盟


【参考文献】
1. ヒューマンエラーと刑事法『業務上過失責任』を問う根拠について 
東海大学法学部教授 池田良彦(2011年1月13日)
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/110113kentoukai_4.pdf

2. 医療過誤における刑事責任の限定 
中央学院大学 教授 萩原由美恵
 http://wwwlib.cgu.ac.jp/cguwww/03/24_0102/24-06.pdf

3. 相違通告に対する日乗連の見解
日本乗員組合連絡会議  2009年5月12日
http://www.alpajapan.org/koukaibunsyo/souituukokunikansurukenkai.PDF

4. WHO GUIDELINES FOR ADVERSE EVENT REPORTING AND LEARNING SYSYTEMS
http://www.who.int/patientsafety/events/05/Reporting_Guidelines.pdf#search='WHO+GUIDELINES+FOR+ADVERSE+EVENT+REPORTING+AND+LEARNING+SYSYTEMS'

5.「過失を犯罪とする刑事法体系を見直すべきである。」
一般社団法人全国医師連盟代表理事 中島 恒夫
Vol. 92, 2013年4月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会
http://medg.jp/mt/2013/04/vol92.html#more

==================================
追)報道発表記事

・http://www.cabrain.net/news/regist.do;jsessionid=4765D6002720B1DF468F2F1A4BCFA15B
・https://news.cabrain.net/regist.do;jsessionid=B4FD1C790859D002B09FAB97B2BFF35D;jsessionid=B4FD1C790859D002B09FAB97B2BFF35D
・http://www.publicpress.jp/2013/04/25

2013年04月20日 全国医師連盟

全国医師連盟グッズ
イベントのお知らせ
メディアの方へ
おすすめリンク
リンク集
全医連メルマガ(無料)申し込みフォーム
Loading